土屋つかさの Unofficial #Ingress Docs Japan

Google/Niantic Labsの位置情報ゲーム「Ingress」のバックストーリーに関連する文書の翻訳記事を中心に書いて行きます(非公式です)。内容を転載する場合は土屋の名前かサイトURLを添付して貰えると嬉しいです。誤訳指摘歓迎。

#Ingress : 日本語で読めるバックストーリーと追いかけ方の紹介

 Ingress Advent Calendar 2014 20日目です。昨日はペコさんによる「Ingress夫婦の話 - ねとは日和」でした。


Ingress Advent Calendar 2014 - Adventar

 ご存じない方初めまして、土屋つかさと申します。ライトノベル作家&デジタル/アナログゲームデザイナーをしております。IngressはiOS版スキャナーリリースから開始、ENL陣営に所属しており、新メダルの追加によってL12になれました。

 この記事では、国内ではほとんど情報がないイングレスのバックストーリーについての概要と、その読解方法について簡単に説明したいと思います。よろしければ最後までお付き合い下さいませ。

■バックストーリーってなに?

 イングレスがXM(とシェイパー)を活用して人類を覚醒させようとしているENLIGHTENED(緑陣営)と、そのXM(とシェイパー)を危険視してそれに対抗しようとしているRESISTANSE(青陣営)との、言うなれば人類の未来を賭けた全世界規模の戦いであることはエージェントの皆さんはご存知かと思います。

 しかし、それは最も大局的な対立構造がそうなっているというだけで、実はイングレスではより細かで魅力的なバックストーリーがサービス開始以来リアルタイムで進行しています。

 例えば、記憶に新しい世界戦シリーズ「#Darsana XM アノマリー」。このアノマリーは何故発生したのか? 青陣営と緑陣営は、なんの為にアノマリー戦を行っていたのか? そもそもアノマリーとはなんなのか? これらについても、イングレスでは(割と偏執狂的に)ストーリーが設定されているのです。

■どこでバックストーリーは読めるのか

 リアルタイムで進行しているバックストーリーは、まとまった物語としては存在せず、様々なメディアに断片情報として提供されています。それは例えばtwitter公式アカウントの呟きであったり、Google+Facebookにリークされたナイアンティック計画関連文書だったり、毎週アップされるYoutubeのニュース動画だったりします。

 イングレスのストーリーには30人近い登場人物(http://tutiya.hatenablog.com/entry/2014/11/21/191305 http://tutiya.hatenablog.com/entry/2014/11/26/093301 ←大体の主要人物)や沢山の企業が登場するのですが、これらのほとんどはGoogle+上にアカウントを持っており、不定期に物語断片を呟いたり、内部文書の体裁を取った画像をアップしたりしています。物語の謎解きを指向しているプレイヤーは、これらの断片情報を合算、解析する事によって、巨大な物語を読み解こうとしているのです。

 また、主要登場人物の人たちには専任の役者さんが割り当てられており、Youtubeの動画やアノマリーイベントにそのキャラとして登場し、演技を披露しています。黒髪の女性クルー(役者はKaty Townsend )と禿頭のおじさんローランドジャービス(同J.B.Blanc )の顔写真は、国内でも知られていると思います。スキャナーで喋っている女性はクルーに憑依(?)している人工知能A.D.A.(同Laura Bailey )の声なんですよ。

 既にお分かりかと思うのですが、Niatic Labs(イングレスの運営元です)はバックストーリーの提供に結構な予算を費やしており、これが日本国内でスルーされるのはどうにももったいない! と土屋は思っています。英語のハードルはもちろん高いのですが、みんなで分担して翻訳すれば、そんなに大変な量では無いんじゃないかなーと(土屋1人で訳すのはむーりー)。

■物語の追いかけ方1:コミックと小説(全て電子書籍

 ではここからは、今からバックストーリーを追いかけたい人に、今存在する日本語の資料や、押さえておきたいアカウント/ページを紹介します。

 イングレスのメインストーリーは、2012年12月1日に欧州CERNで進行していた「ナイアンティック計画」の最終実験において発生したXM大規模漏洩事故「啓示の夜」から始まっています。この時にXMの可能性を知ったローランド・ジャービスと、XMを危険だと悟ったデヴォラ・ヴォクダノヴィッチ博士との対立が、現在に至る戦いへと繋がっています。

 CERNの研究所は(恐らく)閉鎖されましたが、つい最近ポータル冷却時間を120秒に短縮してくれたことで存在感が増したオリバー・リントン=ウルフ博士が、「啓示の夜」の直後にポータルを安定化させる為のアプリケーション「スキャナー」を開発し、それをGoogleのアプリストアに流出させました。皆さんが今プレイしているイングレスは、実はただのゲームではなく、ポータル制御装置だったのです!(今更感)

 この「啓示の夜」とその後のストーリーについてはこちらのコミック(電子書籍/日本語)をどうぞ。現時点では、公式が発刊している書籍の中で、このコミックのみが日本語化されています。

Ingress 1, 2, & 3

Amazon.co.jp: Ingress 1, 2, & 3 電子書籍: Tycho: 本

 このコミックは、"The Niantic Project: Ingress"という小説(電子書籍/英語)の序盤部分をコミカライズした物だと思います(すみませんまだ詳細を確認できていません)。

The Niantic Project: Ingress (English Edition) 

Amazon.co.jp: The Niantic Project: Ingress (English Edition) 電子書籍: Felicia Hajra-Lee: 洋書

Ingress: Level 8 (English Edition)

Amazon.co.jp: Ingress: Level 8 (English Edition) 電子書籍: Felicia Hajra-Lee: 洋書

 小説の著者フェリシア・ハジュラ=リーは幻視能力を持っており、その力を使って秘匿されている物語を描いているようです。最近また記事を投稿し始めているので、新刊が近いのかも?

 また、今回の#Darsanaのキーパーソーンとなった考古学者のハンク・ジョンソンさんもどなたかと共著で小説(電子書籍/英語)を書いています。土屋はこの本は二次創作かなにかだと思っていたのですが、氏のアカウントで「ハジュラの小説より自分が書いた物の方が真実に近い(適当訳)」と呟いていたので、こちらも公式の物語のようです。

The Alignment Ingress (English Edition)

Amazon.co.jp: The Alignment Ingress (English Edition) 電子書籍: Thomas Greanias: 洋書

 追記:こちらのインタビューによれば、著者のトム・グレアニアス(Thomas Greanias)氏は著名な米国作家のようですね。翻訳出版してくれ!>誰か

■物語の追いかけ方2:1周年記念動画

 イングレスのバックストーリーは、当初はP・A・シャポー(通称PAC。これは偽名で、本名はH・リチャード・ローブ。参考)と呼ばれる内部告発者によって、ナイアンティック計画を暴露するサイトで展開されていました。このサイトは既に休止しており、現在は新たに現れたXという協力者によって、Google+アカウントで内部文書がリークされています。

 2013年末、イングレスのリリース1周年を記念して、それまでの物語をまとめた2本の動画が公開されました。この動画はスクリプトが有志によって日本語訳されています(力作!)。この動画(と翻訳)を読めば大体の流れは把握できると思います。

Ingress Year One, Part 1 | INGRESS REPORT(日本語字幕あり)


Ingress Year One, Part 1 | INGRESS REPORT - YouTube

Ingress Year One, Part 2 | INGRESS REPORT


Ingress Year One, Part 2 | INGRESS REPORT - YouTube

和訳

https://plus.google.com/u/0/+MasashiKawashima/posts/9FEBD278z39

■物語の追いかけ方3:2分冊の資料集と2周年記念動画

 バックストーリーが膨大な量の断片情報の集合として描かれていることは既にお分かりいただけかと思いますが、これらの情報を再編集(?)した資料集(電子書籍/英語)も販売されています。2分冊で、どちらも400ページ近い大著です。

Ingress: The Niantic Project Files, Volume 1 (English Edition) 

Amazon.co.jp: Ingress: The Niantic Project Files, Volume 1 (English Edition) 電子書籍: P.A. Chapeau: 洋書

Ingress: The Niantic Project Files, Volume 2 (English Edition)

Amazon.co.jp: Ingress: The Niantic Project Files, Volume 2 (English Edition) 電子書籍: Verity Seke: Kindleストア

 また、つい最近、2周年記念動画が公開されました。part1には日本語訳が付いているので、大まかにストーリーを把握することができます(part2にも字幕をつけて頂けませんかNiantic Labsの方!!!←ついてた!(2014/12/22))。

INGRESS REPORT | YEAR TWO - The Investigation (I)(日本語字幕あり)

INGRESS REPORT | YEAR TWO - The Investigation (I) - YouTube

INGRESS REPORT - YEAR TWO - The Investigation (II)(日本語字幕あり)

INGRESS REPORT - YEAR TWO - The Investigation (II) - YouTube

■日本だって舞台なんだぜ

 長らく日本国内はイングレスのバックストーリーに密接な結びつきはありませんでしたが(とはいえ、過去に東京や石巻アノマリーがあり、その結果は反映されています)、ローソンとのコラボの際に、どうやら「司少佐」と「アキラ」なる日本人(?)が、物語に関連していることが判明しました。

https://plus.google.com/u/0/+Ingress/posts/RK5Uyyjr2Ju

http://tutiya.hatenablog.com/entry/2014/11/29/150604  (上記エントリの私訳)

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■そして現在: #Darsana シリーズと N'Zeer

 2014年夏に行われたアノマリー「#Helios シリーズ」では、ポータル上を移動する40個の「ヘリオスアーティファクトHelios Artifact)」と呼ばれる物体を巡って、ENLとRESで争奪戦が繰り広げられました。今でもIntelマップを開くと白く光っているアレです。

 #Heliosシリーズの終了後、このヘリオスアーティファクトが宇宙に向けて信号(Beacon)を送出していることが、IQテックリサーチ社の調査によって判明します。この動画の7分目あたりから(日本語字幕があります)。

INGRESS REPORT - Raw Feed Oct 02 2014 - #HELIOS FINALE(日本語字幕あり)

INGRESS REPORT - Raw Feed Oct 02 2014 - #HELIOS FINALE - YouTube


 また、数ヶ月間行方不明とされていた考古学者ハンク・ジョンソンが帰還し、この信号が「N'Zeer(動画の発音から「ンジール」もしくは「エヌジーア」あたりか?)」に向けられた物だと説明しました(ちなみに、ハンク氏もナイアンティック計画の主要メンバーの1人でしたが、「啓示の夜」の日はたまたま調査にでかけており、XMを浴びませんでした)。

 N'Zeerがどのような存在(あるいは存在群)なのかについては「シェイパーですらその存在を恐れているらしい」「5000年前まで地球に君臨(?)していたが、今は封印(あるいは休眠)状態にある」「宇宙のどこかにいる」という情報があるくらいで、詳しい事は分かっていません。

 ENLは、シェイパーに対する脅威であるN'Zeerを地球に帰還させる訳にいきません。対してRESは、シェイパーに対抗する手段としてN'Zeerを呼び寄せるのは有効な手段のように思えます。かくして、ヘリオスアーティファクトから送出される信号を止める側(ENL)と維持する側(RES)の戦いが始まりました。……そう、それが #Darsana シリーズだったのです!(ご存知でしたか?)

https://plus.google.com/u/0/events/cpr60tp2jd6e1asr3p8k4iecfqc/108020987035258478791/6091071209536307522

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 10月から12月にかけて、東京を含む世界6カ国のプライマリサイト(&そのセカンダリサイト&期間戦が繰り広げられた100個の#Darsana Global地域)で行われた #Darsana シリーズは、トータルではRESが勝利しました。そして、アノマリーの結果はメインストーリーに反映されることになっています。

 なので、RESの勝利によって信号の送出は継続され、近いうちにN'Zeerが地球に帰還します(多分)。公式の発表によれば、2015年、我々の世界は“The Age of the N'Zeer(N'Zeerの時代)”に突入するのだそうです……! と、言っても、それがなにを意味するのか、まだ誰も知らないのですが(笑)。

■Ingressの楽しみ方の1つ。バックストーリー。

 イングレスはL8より上はレベルによる優位性がほぼ無いため、ゲームを継続しているプレイヤーは、自分でその先の遊び方を見つけることが必要になります。例えばチーム戦によるメガCFの構築やフィールドアートの作成、ゲームとは別にコミュニティとの交流、もちろん、メダルを獲得して上位レベルを目指すことも含まれます。

 これらのイングレスの楽しみ方の一つとして、バックストーリーというコンテクスト(≒文脈)を追う楽しみもイングレスにはあるのだということを、これを機会に知って貰えれば嬉しいです。そして土屋以外にもバックストーリーを翻訳公開してくれるエージェントが増えてくれると、土屋が楽出来て嬉しい! 本当は別に英語得意じゃないんだよ!!!!><

■オマケ:宣伝

 お友達の絵描き4人、文字書き4人でイングレスファンブック「ぼくたちのイングレス」という同人誌を作りました。こちらは特にバックストーリーには触れておらず、逆に「イングレスというゲームを楽しんでいる『ぼくたち』」というコンセプトで編集しています。

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告知記事

Ingress:8人のエージェントによる同人誌「ぼくたちのイングレス」を委託頒布します - 土屋つかさの Unofficial #Ingress Docs Japan


アキバblogさんで紹介して頂きました


プロ作家を含むIngressエージェント8人の合同誌 「ぼくたちのイングレス」 - アキバBlog

 ComicZINさんの店舗及び通販で販売しています。よろしければどうぞ!

通販

http://shop.comiczin.jp/products/list.php?category_id=4028

Ingress : 第18回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門大賞受賞!

本日(2014年11月28日)、第18回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が発表され、エンターテインメント部門において、我らがIngressが大賞を受賞しました! リンク先で飯田和敏さんによる贈賞理由が記されています。

第18回文化庁メディア芸術祭
http://j-mediaarts.jp/awards/gland_prize?section_id=2&locale=ja

 受賞者はGoogles’s Niantic Labsの創業者ジョン・ハンケ氏。国立新美術館の発表会では、ジョン・ハンケ氏のビデオメッセージ(日本語字幕あり)が公開されました(公式サイトに掲載されたコメントよりも長く喋っています)。

https://www.youtube.com/watch?v=jN1yq1rFWgQ


Acceptance Speech - John Hanke - YouTube

 川島優志さんがG+に投稿したビデオメッセージの字起こしを貼っておきます。ジョン・ハンケ氏、川島さん、Google/Niantic Labsのスタッフの皆さん、そして全てのIngressエージェントの皆さん、受賞おめでとうございます!!!!

https://plus.google.com/u/0/+MasashiKawashima/posts/hbqHV39CUFq

文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門大賞という名誉ある賞をイングレスにいただけたことを感謝いたします。

多くの皆さんと同じく私達も
過去の受賞作品の裏側にある創造力に
畏敬の念と、インスピレーションを受けてきました。

千と千尋の神隠し」や「ゼルダの伝説
ソニーの「AIBO」。
アートやエンターテイメント、テクノロジーの世界を
新しい、革新的な方法で広げてきたものばかりです。

そうした偉大な業績と同列に並べられることを
恐縮するとともに光栄に思っています。

私達ナイアンティック・ラボのミッションは
インタラクティブなエンターテイメントの限界を
家という境界を超えて、
現実の外の世界へと押し広げていくことです。

私達は、信じています。

大きな、そして小さな公共芸術作品や、歴史、文化、
私達の周囲にある創造的な力、
見過ごされ、気付かれない場所を
テクノロジーの力で、輝かせることができると。

隣人や

街や

都市を

新しい視点から見て欲しい。

もしかしたら最も重要なのは、
私達は、テクノロジーが、
あらゆる身分や階層、文化、宗教、民族を超えて
人々を共に歩ませられると信じていることです。

イングレスは世界の200以上の国でプレイされ
毎日、国境を超えた友情や連携が生まれています。

イングレスが生まれてから2年に渡り、
サポートしてくれた家族、友人に感謝したい。
そして最も重要なこと、
世界の何百万人ものプレイヤーたちに感謝したい。

スニーカーを履いて、
外へと踏み出し、
新しい道を共に探索するという挑戦を
受け入れてくれた皆さんへ。

彼らこそイングレスの心であり、魂なのです。

この名誉ある表彰を、ありがとうございます。

Google 副社長・Niantic Labs 創業者 ジョン・ハンケ